富山大学 中路研究室公式ホームページの研究内容 Researchです。

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RESEARCH THEME

- 研究内容の紹介 -

当研究室では、バイオアクティブ マテリアル・バイオインアクティブ マテリアル の2本柱で研究を進めています。

富山大学中路研究室の研究テーマ1・バイオアクティブ マテリアル

バイオアクティブ マテリアルの創出

バイオアクティブ マテリアルは、病気になった臓器や細胞に率先して働きかけて制御することで
修復や再生を行うための材料を意味します。
キー要素となるハイドロゲルとキメラタンパク質を組み合わせることにより、
様々な機能をもつ「多機能ハイドロゲル」を創製することが、研究テーマの1つ目になります。

1. 移植細胞の精密制御を可能とするハイドロゲル材料

細胞移植医療を実現させるためには、「生着率移植した細胞が生存する割合のことの向上」と「移植組織内での厳密な制御組織や細胞を目的に応じてほぼ完ぺきに制御すること」を達成する必要があります。
しかし、病気になった組織には、移植した細胞を制御する力がほとんど残っていません。
そこで、生体内で移植細胞を自在に制御することで、病気になった組織を再生できる補助的な材料「機能性ハイドロゲル」の創製について研究を進めています。

富山大学中路研究室のバイオアクティブマテリアルの特徴

機能性ハイドロゲルとは?

細胞は、私たち人間と同様に「衣食住」を必要とします。
細胞にとって衣服や住む家に当てはまるのが「ハイドロゲル」です。
当研究室では更に、栄養となる「食」の機能を兼ね備えた、細胞を制御
するタンパク質を 担持担持(たんじ):タンパク質を担体(基板やハイドロゲルなど様々な材料)に付着・結合させること した「機能性ハイドロゲル」を開発しています。

またこの考えをもとに、設計戦略を立てて構築したのが、細胞足場・
免疫抑制・タンパク質超精密徐放・細胞制御の4つの機能を有する
ハイドロゲルシステムです。(図-1)

材料設計のコンセプト - キメラタンパク質 -

バイオアクティブ マテリアルを創製するうえでキーとなる
“タンパク質担持”は「キメラタンパク質」を用いています。

ギリシャ神話に登場する架空の動物 “キメラライオンの頭とヤギの胴体、毒蛇の尻尾を持つといわれる” の名を持つ
このタンパク質は、由来の異なる複数の部分から構成されています。

当研究室で用いるキメラタンパク質の代表的なものが、

① 細胞を制御するタンパク質ドメイン
② 材料に対して特異的な相互作用を有するドメイン

の2つが融合したタンパク質です。

このキメラタンパク質を用いることで、
「活性を持ったタンパク質を担持させたハイドロゲル」の構築が可能となります。

細胞を制御するタンパク質を安定して材料に担持させることによって、
材料の極近くに存在する細胞に選択的に作用させることができる、継続的に細胞に作用させることができる、という2つの大きなメリットがあります。

2. タンパク質の作用を時空間的に制御できる新規徐放材料の創製

タンパク質は、これまでの低分子薬剤と並んで注目されつつあります(世間では抗体医薬・タンパク医薬と呼ばれています)。
タンパク質を時空間的に制御必要なときに必要な場所で作用させることする材料の創出は、高度先進医療の発展に大きく貢献できるものと期待されています。
そこで、「加水分解」や「酵素による特異的な生分解」、「キメラタンパク質の特性」を応用してタンパク質の作用時機を厳密に制御できるようなシステム開発に
取り組んでいます。

2-1タンパク質作用時機規定型高分子微粒子(Protein Delivery Carrier,PDC)

富山大学中路研究室の二層構造微粒子のタンパク質を放出するメカニズム

タンパク質作用時機規定型高分子微粒子は、2層構造の高分子微粒子で、内層の生体高分子(コラーゲンやヒアルロン酸等)の酵素による特異的な分解を利用したタンパク質徐放システムです。

内層の高分子に担持させることにより、タンパク質は内層の分解が起こることで初めて放出される仕組みとなります。そして、内層高分子にタンパク質を担持させるために、「キメラタンパク質」を利用しています。

内層の生分解をタンパク質作用の最適時機に合わせることで、細胞へのタンパク質作用を効率よく、無駄なく行うことができると期待されています。

図には、二層構造の微粒子のタンパク質を放出するメカニズム(図-2)、微粒子の構成についての断面説明図(図-3)、
そして、実際に作製した微粒子の顕微鏡画像とタンパク質が赤色に発光し、微粒子内に存在することを示す写真(図-4)を掲載しています。

富山大学中路研究室の微粒子の構成についての断面説明図

富山大学中路研究室の顕微鏡画像とタンパク質が赤色に発光し、微粒子内に存在することを示す写真

2-2タンパク質迎撃型放出システム(Protein Selective Releasing System, PSRS)

富山大学中路研究室の抗炎症性サイトカイン追撃型放出システム

特定のタンパク質分解酵素による分解を利用して目的とするタンパク質を放出させ、作用させるシステムです。これは、炎症反応を瞬時に鎮静化させ、ハイドロゲルに包埋包埋(ほうまい):包むことした細胞を保護するために開発したシステムです。

細胞移植において必ず炎症反応が起こりますが、それによって移植細胞が死滅してしまいます。その炎症反応を鎮静化させるためのシステムとして、抗炎症性サイトカイン迎撃型放出システムを開発しました。(図-5)

3. 細胞の機能や特性を調査するためのタンパク質アレイの創製

富山大学中路研究室の細胞アレイ

富山大学中路研究室のタンパク質アレイシステムの構築

細胞の機能や特徴等を調査する手法の一つとして「細胞アレイ」と呼ばれる基材が注目されています。細胞アレイとは、スポット上に細胞を接着させ、その細胞挙動をスポット毎に観察するものです。(図-6)

細胞アレイの最大の利点は、1枚の基板で多くの検体を同時に同環境下で評価できるところにあります。

この細胞アレイ技術をもっと発展させて、タンパク質が細胞に対してどのような効果があるのか、また、どのような作用を受ければ細胞が変化するのか等を評価できるシステム・デバイスの創出は、近い将来実現するであろう細胞移植医療や細胞挙動を詳細に解明する細胞生物学等において、非常に有用であると考えます。

当研究室では、これまでに、キメラタンパク質を利用し、スポット上に特定のタンパク質を担持させた基板を用いた、細胞アレイの創出について研究を進めてきており、幹細胞の挙動を調査するシステムや、1.で述べた移植細胞補助材料の創製において、どのようなタンパク質の作用が細胞制御にとって有効かを調査するための、細胞機能を評価できるタンパク質アレイシステムの構築を行っています。(図-7)

富山大学中路研究室の細胞アレイ画像

バイオインアクティブ マテリアルの創出

バイオインアクティブ マテリアルは、生体のあらゆる物質に対して働きかけない・侵さない材料を意味します。
近年、注目される「双性イオン型高分子」をツールとして用いて、
有用なバイオインアクティブ マテリアルを創製することが研究テーマの2つ目になります。

富山大学中路研究室の研究テーマ2

富山大学中路研究室の正電荷と負電荷の両方を有する、双性イオン型

生体物質(タンパク質や細胞等)に対して率先して働きかけるバイオアクティブ マテリアル とは逆に、何も作用せず不可侵な材料のバイオインアクティブ マテリアル もまた、バイオマテリアル開発において重要な位置付けとなっています。

これまでにも、バイオインアクティブ マテリアル に関する様々な研究が進められており、 抗血栓性材料血液に対して不可侵な材料生体物質非応答性材料細胞・タンパク質が反応しない材料 などが開発されています。

ただ、これまで開発されてきたものは有用であることは明らかですが、複雑で緻密な生体に対応させるのは難しく、状況や用途による制約を受けてしまいます。その為、オールマイティーに使用できる材料を構築することは非常に困難であり、更なる新規材料の開発が求められています。そこで当研究室では、ニーズに応じた新しいバイオインアクティブ マテリアルの開発に取り組んでいます。

ここでキーとなるのが、正電荷と負電荷の両方を有する、双性イオン型と呼ばれる構造が組み込まれていることです。これまでに双性イオン型材料では、生体に対して不活性であることが理解されてきています。それをベースとして様々な材料開発を展開しています。(図-8)

例えば、双性イオン型高分子を利用して、簡便に表面をバイオインアクティブ(生体不活性)にできるコーティング剤の開発や、三次元ハイドロゲルの開発、更には、バイオインアクティブな高強度フィルムの開発など、幅広く進めています。また、少し視点を変えて、近年、分子生物学や細胞生物学で注目される分子クラウディング現象を生体外で観察するためのクラウディング剤の開発なども行っています。

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